誤飲

 

こども救急箱(87)

乳幼児は手に届くものは何でも口に入れる可能性があります。タバコ、洗剤、薬、紙くず、おもちゃなどがその例です。まだ口に入れると危険である

と認識できず、保護者も一日中監視できないため事故が起こってしまいます。飲み込んだものを取り除く処置は簡単にできず、子どもにとって大きな

負担になります。誤飲した場合、特に注意が必要なものの一つにボタン電池があります。最近では薄く小さい形になり、時計、おもちゃ、ゲーム機など

の小型軽量化に貢献していますが、口の中に入れやすくまた飲み込みやすい形になっています。丸い形や光沢のある色は乳幼児の興味を引くかも

しれません。製品の取扱い注意事項として「電池は幼児の手の届かない所に置いてください。万一飲み込んだ場合には直ちに医師に相談して下さい」

と記載されています。数は多くありませんが、毎年救急外来でみられる誤飲事故のひとつです。

ボタン電池はなぜ危険かというと、飲み込んだ際に食道で停滞すると放電により食道粘膜を傷つけたり、また胃液で電池の表面が溶けて中にある

アルカリ液がにじみ出して胃粘膜に穴をあけることがあるためです。飲み込んでしまった場合に下手に吐かせても食道内にとどまったり、気管にひっか

ける可能性があるため危険です。飲み込んだかなと思ったらすぐに病院を受診してレントゲン写真で確認が必要になります。誤飲した場合、全例が治

療の対象になるわけではありませんが、ボタン電池が停滞している場所によってはすぐに取り除くための処置が必要になります。ボタン電池に限らず、

子どもが口に入れると危険なものは手の届かない所において予防することが何よりも重要です。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

柳元孝介(鹿児島大学病院小児科)

平成22年3月29日 南日本新聞掲載