小児用肺炎球菌ワクチン
こども救急箱(89)
2月に「小児用肺炎球菌ワクチン」が発売されました。子どもの重症細菌感染症を防ぐ大切なワクチンです。高齢者を対象にした
肺炎球菌ワクチンはありましたが、乳幼児に効果のあるものは日本初です。
肺炎球菌は、乳幼児の20〜40%、成人の10%の鼻の奥に付着しています。鼻の奥にとどまっているうちは病気になりませんが、
血管内に侵入すると菌血症、髄膜炎、肺炎など重症の病気を引き起こします。肺炎球菌はせきやくしゃみ、接触感染で簡単に広がります。
菌血症は血液中で、髄膜炎は脳の周囲の髄液中で菌が増え、高熱が出ます。乳幼児がかかりやすく、命にかかわる病気です。菌血
症の8割、髄膜炎、肺炎、中耳炎の3割は肺炎球菌が原因で、インフルエンザ菌b型(ヒブ)とともに最も重要な病原菌といえます。肺炎
球菌には多くの型がありますが、このワクチンは重症感染症に多い7種類の型を標的にし、肺炎球菌による重症感染症の約8割を予防
します。世界99カ国で導入され、有効性は証明されています。
10年前に導入したアメリカでは、ワクチンに含まれる型の肺炎球菌による5歳未満の重症感染症が、99%減少しています。副反応は
接種部位の腫れなど一過性のものがほとんどで、重症の健康被害はみられていません。
接種スケジュールは、生後2〜6か月に3回、1歳で1回の計4回です。1歳を過ぎたら2回、2〜9歳は1回でかまいませんが、保育園
や幼稚園などの集団生活が始まる前に、できるだけ早く接種するのが大切です。他のワクチンとの同時接種も可能です。任意接種のた
め費用がかかりますが、「ワクチンで防げる病気で命を失わない」ためにも、ヒブワクチンとともに早めの接種をお勧めします。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
西順一郎(鹿児島大学病院小児科)
平成22年5月3日 南日本新聞掲載