愛情遮断症候群

 

こども救急箱(92)

親からの愛情が長期にわたって受けられないことで生じる、精神・身体症状のことを「愛情遮断症候群」といいます。愛情が感じられないことは

子どもにとって大きなストレスで、低身長や精神発達の遅れ、かんしゃく、感情を出さない、周囲への無関心などの症状が現れます。

 子どもの成長には、栄養、睡眠、ホルモン(成長・甲状腺・思春期には性ホルモン)が必要です。特に成長ホルモンは、夜寝ている間に多く

分泌されるため、睡眠が浅かったり時間が短かったりすると十分に分泌されません。また低栄養でも成長ホルモンの分泌は悪くなるため、十分

な食事を与えられていないと成長障害をきたすことになります。

 この症候群は、養育者(特に母親)の育児に対する悩みが深くうつ状態だったり、ネグレクト(育児放棄)があったりして、適切な養育ができない

ときに起こります。養育者と離れて入院し、ストレスの少ない環境で十分な栄養を与えると身長は伸び、体重も増加します。

 2005年から子ども虐待防止オレンジリボン運動が始まっています。虐待の認識が社会全体に広まり、相談しやすい環境が整ってきたことも

影響していますが、児童虐待の相談件数は年々増加し、08年度は全国で約4万2千件にのぼりました。

 主たる虐待者の約6割は実母です。虐待防止には、親が悩みを打ち明けられる人や環境の存在が重要です。地域の保健師や、子育てサークル

も力になってくれるかもしれません。

 正常な成長や発達がみられないということは、何らかの原因があると考えられます。健診などで、成長障害や情緒障害が気になるお子さんが

いらしたら、ぜひご相談下さい。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員 

四元景子(今村病院小児科)

平成22年6月21日 南日本新聞掲載