子どもの脳腫瘍
こども救急箱(93)
子どもの脳腫瘍(しゅよう)は、腫瘍の種類やできやすい場所が大人と異なり、症状の経過も違います。
大人の場合は大脳にできることが多く、言葉がうまく出ない、手足がしびれて思うように動かない、といった
外面的な症状があり、比較的発見されやすいといえます。
それに対し、子どもの脳腫瘍は約6割が小脳(後頭部)や脳幹部(首と頭の境界部分)にできます。そのた
め脳と脊髄を覆う脳脊髄液が通過するときに障害を起こしやすく、頭蓋骨(ずがいこつ)に囲まれた脳が入っ
ている部分の圧力(頭蓋内圧)が高くなり、頭痛・吐き気・嘔吐などの症状が現れます。
しかし、頭蓋骨のつなぎ目が閉じ始める乳児期後半から幼児期初期までは、成長に伴って頭の周囲が大き
くなるため、頭蓋内圧は緩和されます。そのため腫瘍ができても表面的な症状が出にくく、単にぐったりしたり、
食欲が低下したり、不機嫌になるだけのことがあります。
子どもの脳腫瘍は、できた部位によって特徴的な症状が現れることがあります。例えば小脳に腫瘍ができると、
歩いているときにふらついたり、姿勢の維持がうまくいかなくなったりします。
また脳幹部に生じた場合には、物が二重に見える、顔の半分の動きが悪くなる、ご飯を食べるときにむせる、
などの症状がみられます。視床下部や下垂体(頭の奥深い部分)にできた脳腫瘍によるホルモン分泌異常で、
身長の伸びが遅くなったり、二次性徴が早く始まったり、喉が渇いてたくさん水を飲むようになることもあります。
子どものがんの中で、脳腫瘍は白血病についで2番目に多く、決して珍しくない病気です。小さな変調でも見逃
さずに、かかりつけの小児科医に相談することが大切です。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
西川拓朗(鹿児島大学病院小児科)
平成22年7月5日 南日本新聞掲載