重症化招く耐性菌

−ワクチン接種で予防−

 

こども救急箱(95)

 肺炎球菌に対するワクチンが開発されました。従来、肺炎球菌のようなありふれた細菌に対しては抗菌薬

(抗生物質)があるので、多大な経費が必要なワクチンの開発対象にはなっていませんでした。ところが、最

近は抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えていて、重症の病気を引き起こす細菌への対策が重要になってい

ます。

 肺炎球菌は、5080%の健康な子どもの鼻の奥にいて、細菌性髄膜炎、細菌性中耳炎、肺炎・気管支

炎などを引き起こします。現在、抗菌薬が効きにくい肺炎球菌が6〜8割を占め、重症化・難治化する傾向

があります。以前は薬で簡単に治せた病気が、治療法がない病気になりつつあるわけです。

 なぜ、抗菌薬が効かない菌が増えたのかという疑問には「抗菌薬を使ったから」という答えが正しいのです

が、人間の命を守るためなので議論の余地はありません。今後も次々と耐性菌が出現するでしょう。

 菌から子どもを守るには、新しい抗菌薬の開発と同時に、抗菌薬を使わなくてもよい体質にするワクチンの

開発が重要です。熱が出るたびに抗菌薬を飲ませるよりも、抗菌薬がいらない体質にしたいものです。

 今回、開発されたワクチン(プレベナー)は、以前からある肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)が高齢者を

対象にしていたのとは違い、小児の病気予防が目的です。

 肺炎球菌ワクチン(プレベナー)の接種は2カ月から7カ月未満の乳児は4回、7カ月から1歳未満の乳児

には3回、1歳の幼児には2回、2歳から9歳の小児には1回の接種となっています。必要に応じ他の予防接

種との同時接種も可能です。小児科医として、ぜひ勧めたいワクチンです。

 

 

NPO法人こども医療ネットワーク会員

亀之園 明(田上病院小児科)

平成22年8月2日 南日本新聞掲載