新生児聴覚スクリーニング
−聴力異常を早期発見−
こども救急箱(97)
「新生児聴覚スクリーニング」は、赤ちゃんに聴力異常がないかを調べる検査です。言葉の発達や
コミュニケーション能力を得るのに深くかかわる先天性難聴などの障害を早期に発見、適切な治療や
療育に結びつけるための重要な検査です。
自動ABR(聴性脳幹反応)とOAE(耳音響反射)の2種類があり、生後1週間くらいまでの赤ちゃんを
対象に行います。結果は「パス」(合格)と「要再検」で示されます。検査は健康な赤ちゃんの一時的聞
こえの悪さも「要再検」とし、本当に聴力が悪い赤ちゃんを見逃さないよう工夫されています。その結果、
「要再検」となった赤ちゃんの約60%は正常だったという報告もあります。
「要再検」と言われた場合は詳しい検査が必要で、より精度が高い装置を使って、正確に難聴の重症
度や脳幹の発達を評価するので、聴力にどの程度の問題があるかが分かります。乳幼児の難聴に詳しい
耳鼻咽喉科の医師の診察を受け、注意深く経過観察します。
精密検査の結果、実際に聴力に問題がある場合は、生後6カ月までに補聴器をつけ、音を聞かせる教育
を始めます。たくさん音を聞かせて遊ばせるといったもので@聴児通園施設A地域の身障センター・療育セ
ンターB特別支援学校―などの施設で受けられます。最初は補聴器をつけますが、1歳半以降に人工内
耳の手術を受けて、耳で聞いて話す教育を受けます。
早期に正しい判断をし、音を耳に入れてあげることが重要です。そのためにも、適切な時期にさまざまな
分野の専門家がかかわり、障害の程度によって医学的な対応や療育の方向性を見極めることが重要です。
NPO法人こども医療ネットワーク会員
倉内宏一郎(鹿児島市立病院新生児科)
平成22年9月6日 南日本新聞掲載