こども救急箱

vol.307 インフルエンザ

―流行に備えワクチンを―

南日本新聞掲載日付 2022/11/25

冬はインフルエンザ流行の季節ですが、最近は2年続けて流行しませんでした。将棋の藤井聡太竜王の言葉を借りれば、思いがけない幸運を意味する「僥倖」でしたが、この冬は一体どうなるでしょうか。2年流行がなく、ウイルスに対する免疫が弱い人が増えていることを考えると、インフルエンザが子どもにとって脅威であることは間違いありません。

ワクチンには「インフルエンザの発症を予防する」「学校での欠席日数を減らす」などの効果が期待でき、国内の小児科医の大半が所属する日本小児科学会は接種を勧めています。台風や火山噴火に備えてさまざまな対策をするように、感染症の流行に備えることは非常に大事です。

「予防と治療とに人為の可能を用いないで、流行感冒に暗殺的の死を強制されてはなりません。」「世間には予防注射をしないと云う人達を多数に見受けますが、私はその人達の生命の粗略な待遇に戦慄します。自己の生命を軽んじるほど野蛮な心理はありません。私は家族と共に幾回も予防注射を実行し、其外常に含嗽薬を用い、また子供達の或者には学校を休ませるなど、私達の境遇で出来るだけの方法を試みて居ます。」(横浜貿易新報・1920年1月25日付)などの文が新聞に掲載されたのは、なんと100年以上前。インフルエンザの「スペイン風邪」が世界で大流行していました。「君死にたまふことなかれ」などで知られる歌人の与謝野晶子が、家族を感染症の脅威から守ろうと奮闘しながら寄稿したものです。

私たちは現代の文明社会に生きています。歴史に学び、科学の力を用いて、子どもたちと社会を守りましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

山遠 剛(県民健康プラザ鹿屋医療センター小児科)