「新生児マススクリーニング」をご存知でしょうか?産院では「先天性代謝異常等検査」という名称で1977年から実施されています。先天代謝異常症とは非常に稀な病気で、食べ物から取り込んだ物質を分解したり、新しい物質を作ったりする「代謝」という働きに問題があり、様々な症状を引き起こす病気です。
新生児マススクリーニングは、赤ちゃん全員を採血してこの先天代謝異常症を早期に発見し、早期の治療により障がいの発生や突然死を防ぐことを目的とした検査です。現在、検査料は行政が負担してくれるため無料です。
当初は6疾患が対象でしたが、医学の進歩とともに新たに対象とする疾患が増えています。鹿児島県ではこれまでの20疾患に加え、最近ライソゾーム病という病気を追加できるようになりました。
私たちの体の細胞では、必要な成分やエネルギーを作る一方で、不要な物質を細胞内にあるライソゾームという小器官の中で、多種類の「酵素」と呼ばれるタンパク質が分解しています。ライソゾーム病は、これらの酵素の働きが弱く、細胞の中に不要な物質が溜まり、様々な症状をきたす病気です。これに対し、必要な酵素を補充する治療法が開発されましたが、早期診断が難しいことが課題でした。生後早期の診断で、早期治療が可能になり、障がいの発生を防ぐことが期待されます。
既存の新生児マススクリーニングで使用する血液の一部を使って検査を行うため、赤ちゃんへの追加負担はありません。但し、本検査に係る費用等は個人で負担していただく必要があります。検査を受けるかどうかは保護者の自由意思で決められます。現在はまだ一部の医療機関のみで可能ですが、今後、検査可能な医療機関が広がっていくと思われます。
こども医療ネットワーク会員
丸山 慎介(鹿児島大学病院小児科)