冬場になると、いわゆる「風邪」で発熱し、けいれんで救急搬送される子どもが増えます。多くは熱性けいれん(発熱に伴う短時間の全身性けいれん)で、予後も良好です。しかし、中にはけいれんが長く続いたり、けいれん後の意識の状態が悪かったりする子がいます。こうした場合、「急性脳症」という病気に注意が必要です。
急性脳症は、ウイルス感染などを契機とした過剰な免疫反応が脳の機能に影響を与え、けいれん、意識障害、行動異常などを引き起こす病気です。
確固たる治療法がなく、患者の状態に応じて脳のむくみを抑える治療や炎症性物質を抑制する治療などを集中的に行います。それでも3分の1を超える患者に後遺症が出て、さらに約5%の患者は亡くなってしまう、という点がこの病気の恐ろしさです。
急性脳症の原因としては、インフルエンザウイルスやヒトヘルペスウイルス6型(突発性発疹の原因)などが多く報告されています。また、新型コロナウイルスでも流行の拡大によって脳症による死亡例が報告されています。
一部の病気はワクチンがあり、急性脳症などの重症化の予防が期待できます。新型コロナウイルスワクチンについても、日本小児科学会が生後6か月以上のすべての子どもへの接種を推奨しています。
現在、一部のワクチンは任意接種で、接種するかどうかを保護者が判断しなければなりません。強調したいのは、「感染しないために」ワクチンを接種するのではなく、「急性脳症を含めた重症化を防ぐために」ワクチンを接種してほしいということです。これからの時季、さまざまなウイルスが流行しやすくなります。ワクチン接種をぜひ検討してください。
こども医療ネットワーク会員
今塩屋 聡伸(出水総合医療センター 小児科)