「糖尿病」という病名を聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか。「食べ過ぎや運動不足の人がなる病気」「生活習慣病」「大人の病気」―。こんなイメージを持つ方が少なからずいらっしゃるのではないかと思います。しかし食べ過ぎや運動不足が原因ではない、生活習慣病でもない糖尿病が存在します。
糖尿病には大まかに1型と2型がありますが、小児期に発症する糖尿病の多くは1型です。1型糖尿病は何らかのきっかけにより、本来起きるはずのない免疫反応が起きてしまい膵臓の細胞が破壊され、血糖を下げるホルモンであるインスリンが急速かつ不可逆的に低下し、慢性的に高血糖となる病気です。
病院を受診するきっかけとなる症状として多いのが、強いのどの渇きがありたくさん水を飲む、尿がたくさん出る、トイレに行く回数が増える、体重が減るなどです。ひどい場合は意識障害から救急搬送され、診断されることがあります。自覚症状がなくても学校や幼稚園、保育所での検尿で尿糖陽性となり発見されることもあります。
治療の基本は不足したインスリンを注射で補うインスリン療法です。運動はインスリンの効きをよくしたり、食後の高血糖を抑制したりできるので積極的に行います。
意外に思われるかもしれませんが、食事を制限することはありません。子どもの糖尿病のコントロール目標の一つに『正常な成長』もあるので、各年齢のエネルギー必要量をバランスよくしっかり摂取します。インスリンを補充すれば食べたいものは何でも食べられます。
1型糖尿病が正しく理解されず、傷ついたことがあるという患者さんの声を耳にすることがあります。少しでも多くの方が知ってくださることを願っています。
こども医療ネットワーク会員
関 祐子(鹿児島大学病院小児科)