早寝早起きの習慣が大切と言われてきました。適切な睡眠習慣の確立が重要で、最近は学会や研究会でも子どもの睡眠について多くの議論がされています。
生活習慣の乱れが気力や体力、さらには学業成績にも影響を及ぼすという種々のデータが示され、文部科学省による平成18年からの「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進につながったと思います。
乱れの原因がSNSにあるとする意見も多く、その浸透力の強さに社会全体で抵抗できない状況です。それもあって最近では子どもの睡眠の重要性が特に注目を浴びるようになっています。
昔から寝る子は育つと言われ、適切な睡眠によって成長に必要なホルモンの分泌が促進されることも証明されています。朝の光をあびることによって脳内ホルモンのセロトニンが活発に分泌され、集中力のある活動を推進し、日が沈むとメラトニンという睡眠を促すホルモンが分泌されて自然の眠りにつきます。
文明の発達で太陽とともに生活する習慣が崩れてきたのですが、子どものときだけでも何とか自然に近い状況で育ってほしいですね。
朝の光に浴びた時点でメラトニンの分泌スイッチが入り、約16時間後から分泌されることがわかっており、自然で良質な睡眠を獲得するには、これらの仕組みがうまく働くことが重要です。つまり、スイッチを入れる早起きが先で、次に朝ごはんをよく噛んで食べることによりセロトニンを分泌させ、昼は活発に活動し、夜にメラトニンよって就寝するのです。ポイントは早寝早起きではなく、早起き早寝なのですね。
社会全体を見ると深夜に勤務する保護者もいるわけですので、家族全員で早起き早寝というわけにはいかない家庭もあります。それぞれのご家庭に合わせた子どもの「早寝早起き朝ごはん」があるのかもしれません。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)