こども救急箱

vol.344 マイコプラズマ感染症

―手洗いで予防を―

南日本新聞掲載日付 2025/12/23

マイコプラズマ感染症は「肺炎マイコプラズマ」という細菌が原因となる感染症です。名前の通り、肺炎や気管支炎などの呼吸器の病気を起こします。小児や若年成人で多く、特に学童期の肺炎では最も頻度が高い原因となります。

鹿児島県では2022年と23年には報告がなかったですが、24年に流行し457件の報告がありました。25年も多くの患者さんがいます。

主な症状は発熱やせき、だるさなどです。熱が下がったあとも、せきだけが3~4週間続くことも珍しくありません。呼吸器以外の症状が目立つ人もいます。頭痛や吐き気が中心の髄膜炎、耳の痛みが強い中耳炎、おなかの痛みを伴う腹部のリンパ節炎がみられることもあります。そのほか、じんましんや紅斑などの皮膚症状、心臓の動きが悪くなる心筋炎、貧血などを合併するケースもあります。

原因となる肺炎マイコプラズマは細菌なので、治療には抗菌薬(抗生物質)が使われます。マクロライド系抗菌薬がよく使用されますが、効きにくい「マクロライド耐性菌」の場合には、別の種類の抗菌薬を使うこともあります。重い肺炎では、炎症を抑える目的でステロイドを併用することもあります。

マイコプラズマ感染症には、インフルエンザのような予防接種はありません。患者さんのせきのしぶきを吸い込んだり、手を介して顔や口に触れたりすることで感染するため、せきが出るときはマスクを着用し、日頃から流水と石けんによる手洗いを心がけてください。家族内で感染者がいる場合には、感染が広がらないよう、タオルの共用は避けることも大切です。

マイコプラズマ感染症は、発熱やせきだけでなく、さまざまな症状が出現することがあります。お子さんの様子に「いつもと違う」と感じることがあれば、かかりつけの小児科を受診いただくことが重要です。

 

こども医療ネットワーク会員

児玉祐一(鹿児島市立病院小児科)

vol.343 とびひ

―皮膚を清潔に保って―

南日本新聞掲載日付 2025/11/25

「とびひ」(伝染性膿痂疹)は、乳幼児に多い皮膚の感染症です。

原因は、黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌といった皮膚や鼻の常在菌です。

汗をかく夏に多いですが、虫刺されや湿疹、アトピー性皮膚炎などで皮膚に小さな傷ができるとそこから感染し、季節を問わず発症します。手やタオルを介して、兄弟や別の部位に「飛び火」するようにうつることから、この名前がつきました。

はじめは小さな水ぶくれや赤みとして現れ、次第に破れて皮がむけ、ただれたようになります。

顔や腕、足など露出したかきやすい部位に多いですが、乳児では首やわき、おむつの中など、蒸れやすい場所にも見られます。まれに発熱やリンパ節の腫れ、のどの痛みを伴うこともあります。

症状が軽い場合は、抗菌薬入りの軟こうを塗ることで4~5日で良くなります。

最近は薬が効きにくい菌(耐性菌)も増えており、治りが悪い場合は軟こうを変更したり、全身に広がる場合は内服抗菌薬を使ったりします。かゆみが強い場合は、ステロイド軟こうや抗アレルギー薬を併用することもあります。

家庭では、石けんをよく泡立ててやさしく洗い、清潔なタオルで拭きましょう。兄弟間の感染を防ぐため、タオルや衣類の共用は避け、薬を塗ったあとはガーゼなどで覆うと安心です

予防には、手洗いと皮膚の清潔、爪を短くして皮膚を傷つけないことが大切です。アトピー性皮膚炎や乾燥肌のお子さんは、日々の保湿ケアで肌の状態を整えておきましょう。

登園・登校の制限はありませんが、感染を防ぐため患部は覆って露出しないようにします。水を介してうつることはないのですが、肌の接触で感染するため、治るまではプールに入るのを控えるのが望ましいです。

早めの受診と毎日の清潔習慣が、子どもの肌を健やかに保つ秘けつです。

 

こども医療ネットワーク会員

坂元沙樹(北薩病院小児科)

vol.342 O脚

―成長とともにまっすぐに―

南日本新聞掲載日付 2025/10/28

O脚(おーきゃく)とは、両足をそろえて立ったときに膝と膝の間にすき間ができ、足全体がアルファベットの「O」の形のように外向きに曲がって見える状態のことです。医学的には「内反膝(ないはんしつ)」と呼ばれます。

日本人の赤ちゃんの多くは生まれつきO脚です。1、2歳ごろの歩き始めの時期にいちばんO脚が強くなりますが、成長とともに自然にまっすぐな足へと変わっていきます。これを「生理的O脚」といい、ほとんど心配はいりません。

3〜5歳ごろには、膝が内側に寄るX脚になる子も多いですが、小学校入学前後には自然にまっすぐな足になります。つまり、子どものO脚やX脚の多くは成長の途中に見られる一時的な変化です。

ただし、次のような場合は注意が必要です。①2歳を過ぎてもO脚が強い、または悪化している②左右の足の曲がり方が違う③膝の痛みや歩き方の異常がある④身長の伸びが悪い。このようなときは、整形外科や小児科を受診するとよいでしょう。

ビタミンDが不足して骨の形成が弱くなる「くる病」でもO脚が起こります。最近は少ないものの、食物アレルギーなどで食事制限が多い子や、日光に当たる時間が少ない子では注意が必要です。

ある研究では、O脚の赤ちゃんはO脚でない子に比べてビタミンDやカルシウムが不足しがちであることが分かっています。サケ、イワシ、シラスなどの魚を食べたり、日光浴をしたりすることで、骨を丈夫に保つことができます。

ほとんどの子どものO脚は成長とともに自然に治ります。大切なのは、外遊びなどでしっかり歩き、太陽の光を浴びながら健やかに育つこと。親としては「治そう」と焦らず、おおらかに成長を見守ることが何よりの支えになります。

ビタミンDを体がつくるためには、日光(紫外線)が必要です。春と夏は、顔と手足に1日5〜15分ほど、秋・冬は20〜30分程度、外で遊ぶなどして日光を浴びるのが目安です。1歳半健診、3歳児健診ではO脚をチェックするので受けるようにしましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

岡本康裕(鹿児島大学病院小児科)

vol.341 臍ヘルニア

―気になる時は相談を―

南日本新聞掲載日付 2025/09/23

赤ちゃんの健診をしていると、「子どもが出べそなんです」とよく相談されます。赤ちゃんが泣いた時に、おへそがぷっくり飛び出し、保護者の方を心配させるものですが、正式な病名は「臍(さい)ヘルニア」といいます。

赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時、栄養や酸素をもらうためにつながっているへその緒(臍帯)は、生まれた後2週間ほどで自然に脱落します。その後、へその緒の通り道の穴(臍輪)が収縮して閉じますが、閉じる前に赤ちゃんが泣いたりいきんだりしておなかに力が入り、おへそが膨らんでしまうことがあります。

これが臍ヘルニア、いわゆる出べその成り立ちで、生後1〜2ヶ月頃に最も大きくなります。

出べそは赤ちゃんの10人に1人くらいに見られ、決して珍しいものではありません。飛び出した腸がヘルニアの出口で強く締めつけられ血流障害を起こすことを嵌頓(かんとん)と言いますが、臍ヘルニアの場合は極めて稀です。

1年で80%、2年で90%が自然に治るため、以前は様子を見ることが多く、治らないときは手術をしていました。

最近ではただ待つのではなく、より早く、よりきれいに治すため、圧迫療法が多くの病院で積極的に行われるようになりました。飛び出したおへそを綿球や専用の固定具で優しく押さえ、テープで固定する方法です。病院や先生によってやり方が少し違いますが、自宅や病院で皮膚炎に気をつけながら行います。

治療期間は小さいもので1~2ヶ月、大きいものだと2~3ヶ月程度が目安となります。圧迫療法だけで治らなくても、臍の皮膚の弛みを防ぐことで、手術が必要になった場合にやりやすくなるというメリットもあります。

圧迫療法は出べそが小さいほど早く治る傾向があるので、治療開始が早いほど効果が高く、生後6ヶ月以降では治りにくくなります。赤ちゃんのおへその形が気になる時は、お早めにかかりつけの小児科医にご相談ください。

 

こども医療ネットワーク会員

鈴東昌也(すず小児科)

vol.340 夜泣き

―周囲の力も借りよう―

南日本新聞掲載日付 2025/08/26

夜泣きとは、赤ちゃんが夜間に理由もなく泣くことを言います。

一般的に生後半年から始まり、1歳半ごろに落ち着くことが多いとされていますが、個人差もあります。

原因ははっきりしていませんが、睡眠リズムが未発達で眠りが浅くなってしまうことや、日中の刺激を脳が処理しきれないことが関係しているとされています。

赤ちゃんが泣いたら、空腹ではないか、オムツが汚れていないか、暑くないか、寒くないか、といったことを確認すると思います。それらをクリアしても泣き続ける場合には、理由のない夜泣きかもしれません。

すぐに抱き上げずに、優しく声をかけたり、体をトントンと軽くたたいたりすることで自然に再入眠することもあります。

抱っこしてゆらゆら体を揺らしたり、赤ちゃんの好きな音楽をかけたりするのもいいかもしれません。

夜泣きの対策としては、生活リズムを整えることも大事です。

朝は決まった時間に起こし、昼間によく遊ばせ、夜眠る前には絵本を読むなどのルーティンを作るのがよいでしょう。

しかし、これらの対応をしても泣きやまないこともあります。赤ちゃんは泣くのが仕事なので、成長過程の一部だと理解することも必要です。

その一方で、普段と泣き方が違ったり、あまりにも激しく泣いたりする場合には、病気が原因になっていることもありますので、小児科の受診も検討しましょう。

夜泣きの対応をしながら自分も睡眠不足になる生活はつらいものです。

保護者が協力して対応するのはもちろんですが、大変な時には市町村の窓口へ相談したり、産後ケアなどのサービスを使ったりすることも有用かもしれません。

周囲の力を借りながら大変な時期を乗り越えていきましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

平野京香(済生会川内病院小児科)