こども救急箱

vol.263 水痘と帯状疱疹

―大人が子にうつすことも―

南日本新聞掲載日付 2019/02/05

 2014年から1歳児への水痘ワクチンの定期接種が始まりました。水痘(水ぼうそう)は皮膚の表面が赤くなり、かゆみを伴う発疹や水疱が現れ、38度前後の発熱が2,3日続きます。

 一度かかると、皮膚から脊髄につながる感覚神経の中にウイルスが長い間潜伏します。免疫力が低下すると、再び皮膚に現れて帯状疱疹をもたらします。帯状疱疹は、身体の左右どちらか一方の皮膚に、ピリピリとした痛みを感じ、これに続いて赤い発疹と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気です。

 帯状疱疹の病原体は水痘・帯状疱疹ウイルスで、水ぼうそうの原因ウイルスと同じです。発疹は治療で治りますが、一部の人に「帯状疱疹後神経痛」という、慢性的な激しい痛みが残ることがあります。

 帯状疱疹は1年間に千人あたり5~6人が発症するよくみられる病気です。50歳ぐらいから増え始め、高齢になるほど発症率が高くなります。16年から、50歳以上の人は、この帯状疱疹を予防できるワクチンを接種できるようになりました。

 これは新しいワクチンではなく、子どもに接種する水痘ワクチンと同じです。副作用もほとんどなく、安心です。効果は完全ではありませんが、帯状疱疹を発症するリスクを約60%減らすことができ、帯状疱疹後神経痛の予防にも有効です。

 1歳児には定期接種になりましたが、1歳未満の乳児は接種できません。また、生ワクチンなので、免疫力が低下している病気の子どもたちも接種できません。帯状疱疹の病変からは、水痘・帯状疱疹ウイルスが排出されますので、もし発症したら、水痘に免疫のない子どもに感染を広げる可能性があります。

 水痘に免疫のない子どもや孫のため、またご自分の健康のためにも、大人もワクチンで予防することをおすすめします。かかりつけ医にご相談ください。

 

こども医療ネットワーク会員
西順一郎(鹿児島大学医歯学総合研究科 微生物学分野教授)