児童相談所全国共通ダイヤル「189」(いちはやく)は、平成27年から使われている全国共通の番号で、虐待かもと思った時に児童相談所に通告・相談できる電話番号です。全国どこからでも近くの児童相談所につながり、匿名でも通告・相談できることになっています。それ以前は10桁の番号でしたので、使いやすくする工夫が感じられます。
児童虐待による死亡事件は頻回に報道されており、最近のニュースでも多くの大人が関わっていたにもかかわらず、小学生の命を救えなかった事実が明らかになりました。親が子を戒めることを認める民法の「懲戒権」の見直しや、「児童虐待罪」の新設を議員が提案すること検討されています。
よく知られていることですが、児童虐待をする親は、子どもの時に虐待を受けていると言われています。人には自分の過去を肯定したいという本能があり、自ら受けた教育あるいはしつけと同様に子どもを育てる傾向にあるそうです。対応機関の充実や罰則規定の強化で解決できれば良いのですが、現実にはなかなか難しいと思います。
しつけ、体罰、暴力などについて初等教育から成人になるまで継続して議論し、人は生まれた時から基本的人権が認められている法治国家であることを認識する必要があるように思います。
ところで、子どもの体調が悪く、医療機関へ連れて行く必要があるのに怠ることを医療ネグレクトと言い、児童虐待の中に含まれます。健診や予防接種の通知が届いても適切な対応をしない場合や、保護者が社会で認められていない独自の治療・対処法を子どもに押し付けると、児童虐待防止法に触れる可能性があります。
社会全体で子どもの健全な発育を見守るために、189があるのだと理解しています。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)