こども救急箱

vol.265 先天性風疹症候群

―妊婦への感染防止を―

南日本新聞掲載日付 2019/04/02

 昨年から都市部を中心に風疹が流行しています。昨年からの患者数は3,567人と、2013年の大流行に迫る勢いです。鹿児島・宮崎でも7人報告されました。患者の多くは風疹の免疫が十分ではない30~40代の男性です。風疹は、風疹ウイルスによって起こり、首の後ろのリンパ節が腫れ、発熱と発疹が3~5日間続きます。発症数日前からウイルスが唾液に排泄され、人から人に飛沫感染で広がります。

 風疹自体は自然になおりますが、妊婦が妊娠20週以内に感染すると、新生児が難聴、眼の障害、心臓病、小頭症などの先天性風疹症候群を起こします。2013年の流行では全国で45人報告され、そのうち11人(24%)が死亡しました。今年もすでに1人報告されています。

 風疹の予防はワクチン以外にありませんが、生ワクチンのため妊婦には接種できません。妊婦は妊娠中に抗体検査で免疫を確認します。MR(麻疹・風疹混合)ワクチンを過去に2回接種しておらず、抗体価が不十分な場合は、人ごみに行かないなどの注意が必要です。また、出産後は次の妊娠にそなえて、すぐにMRワクチンを受けてください。

 妊婦の周囲の方も、妊婦にうつさないように免疫を確認しておく必要があります。過去にワクチンを接種していない方だけでなく、1回接種だけの方も免疫が低下している可能性があります。現在、妊娠を希望する女性、その配偶者などの同居者、抗体価が低い妊婦の同居者は、抗体検査を無料で受けられます。また、今年の4月から、39~56歳のすべての男性が抗体検査を受けられるようになり、抗体価が低い場合は定期接種としてMRワクチンを接種できます。お住まいの市町村または医療機関にご相談ください。

 

こども医療ネットワーク会員
西順一郎(鹿児島大学医歯学総合研究科微生物学分野)