乳歯は一般的には5歳頃から生え替わりが開始します。普通は乳歯の下にある永久歯があごの骨の中で成長しながら上がってきて、乳歯が抜けるとすぐに永久歯が見えてきます。
その際は乳歯の根がとけていることがほとんどです。しかし、成長による歯の生え替わりではなく、永久歯が生えずに乳歯が早く抜けてしまうことがあります。その原因として一つは歯のけがです。遊んでいる最中の転倒や強打によって乳歯が抜けてしまうことがあります。でも、思い当たるけがはないのに、5歳以下で早く乳歯が抜けてしまう場合は低ホスファターゼ症(HPP)という病気の可能性があります。これは、体の中のアルカリホスファターゼという骨を強くする酵素が不足することで起こります。この病気の特徴は乳歯の根がとけずに抜けてしまうことです。それは歯を支えている骨と歯の根をつなげる部分が何らかの原因で弱くなるからと考えられています。小さいお子様の保護者は、乳歯が抜けた原因を歯のけがや、硬いものを噛んだことによって抜けたと考えることが多いですが、低ホスファターゼ症のように病気によって乳歯が抜ける場合があることも知っていただきたいです。歯の様子から低ホスファターゼ症が疑われた場合には小児科へ紹介し詳しい検査を行うことになります。(小児科での検査や治療に関しては次号で予定しています)
乳歯は顎を作る上で重要な役割を果たします。また、食べる、話すといったお口の機能を育てる上でも大事な要素です。また、抜けた後はしばらく永久歯が生えてこない場合が多いので、子ども用の入れ歯(小児義歯)を入れて、永久歯が生えてくるスペースを保つ必要があります。もし、乳歯が早く抜けた場合は、新たな病気をみつけるきっかけになる場合もあるので、抜けたまま放置せずに近くの小児歯科専門医を受診し、乳歯が抜けた原因を調べてもらいましょう。
こども医療ネットワーク会員
佐藤秀夫(鹿児島大学病院小児歯科)