こども救急箱

vol.278 新型コロナ「裏の顔」

―DVや虐待の発生報告―

南日本新聞掲載日付 2020/06/02

 今年は『ニイゼロニイゼロ』と心地よい響きの新年の始まりでしたが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、感染に対する恐怖、流行阻止のための行動規制、およそグローバル化と逆行する鎖国状態、先進各国でみられた医療崩壊など、誰も予想できませんでした。

 コロナウイルスは一般的な風邪ウイルスの一つですが、今回はヒトが経験したことがない型に変化(変異)し、新型が誕生しました。当初は肺炎が騒がれましたが、味や臭いを感じないことや、小児では川崎病に似た症状も出ることが報告されています。

 一方で、この新型ウイルスに感染しても、症状が出ない人やごく軽症の人が8割もいること、特に若者にその傾向が強く、しかも症状がない状態でも他の人にウイルスを感染させてしまうことも判明しました。そのため、国から緊急事態宣言が発出され、居住地を離れない移動自粛が叫ばれています。主な死亡原因は肺炎ですが、成人、特に高齢者や肺疾患や糖尿病など基礎疾患を持つ人では急激に悪化することもあり注意が必要です。幸い、小児の重症例はほとんど報告されていないものの、注意を怠ってはいけません。

 以上が表の顔とすると、裏の顔も考えなければなりません。感染拡大を防ぐため緊急事態宣言が出ている時、学校は休校し、保護者も自宅での勤務を余儀なくされます。長時間、自宅のみで過ごしていると、閉塞感でストレスが蓄積し、ストレスを怒りによって発散する傾向になります。新型コロナはそんな人間の心の弱みにつけこみやすく、家庭内暴力(DV)や虐待の発生が各地で報告されています。

 新型コロナウイルス感染症の表の顔にも、裏の顔にも負けたくないですね。困った時には配偶者暴力相談支援センターや虐待対応ダイヤル「189」の利用もお勧めします。

こども医療ネットワーク会員
嶽崎智子(鹿児島生協病院小児科)