4月から5月にかけての緊急事態宣言で下火になったかと思われた新型コロナウイルスによる感染症が、全国的に再度勢いを増して広がっています。感染症予防と経済活動のバランスで、世界各国のリーダーが創意工夫にしているようですが、明確な正解がない課題に直面して難渋している様相です。
わが国は諸外国に比して感染者数も死亡者数も少ないと思われましたが、想定よりも早く大きな勢いで第2波が襲来し、日常生活においても季節の恒例行事がことごとく中止になっています。
日常生活がコロナ禍で破壊されているように見えますが、考え方によっては新しい気づきをもたらしているかもしれません。例えば、私のような大学教員の立場では、各種学会をはじめ会議や授業のあり方など、従来やってきたことの中に、実は無駄な移動や必要のない行事が含まれていたことに気づき始めています。
医療現場を見ると、手洗いやマスク、あるいは慎重な行動によって感染症の拡大は防げることを再認識しましたし、多くの方が病院受診の中には「不要不急」なものがあったと感じたかもしれません。
一方で、絶対に必要なことなのにコロナ騒ぎで後回しにされたのではないかと危惧することもあります。子どもの予防接種や健診です。予防接種は「ワクチンデビューは2か月から」という言葉で表現されるように、接種時期が非常に重要です。指定された期間に受けた場合にだけ公費負担になる制度は、接種時期に意味があるという理由です。乳幼児健診も同様で、仮に「もう少し経過をみましょう」ということがあっても、いつ指摘されたのかが重要な情報になります。
不要不急という言葉の意味は、それぞれの生活によって異なりますので、何もかも控えることがないように注意したいものです。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)