こども救急箱

vol.287 子どもの「おもらし」

―正しい排尿習慣が重要―

南日本新聞掲載日付 2021/03/02

泌尿器科でこどもを専門に診療をしていると、“おねしょ”(夜尿症)と並んで多くの相談があるのが、幼児、学童の昼間の“おもらし”です。これは“おねしょ”とは異なり、尿意を感じて自分でトイレで排尿できる年齢になっても日中におしっこを漏らしてしまうことで、昼間尿失禁といいます。日本の小学生を対象にした研究では、昼間尿失禁の頻度は6%と報告されています。

昼間尿失禁は学校生活でいじめやからかいの対象となることがあり、このような心的ストレスは不登校の原因となるだけでなく、こどもの心的発達障害の一因にもなり得ます。また、昼間尿失禁の多くは成長と共に改善しますが、まれに腎臓や膀胱の生まれつきの疾患が原因となっていることがあり、その場合は手術が必要なこともあります。一般的には4〜5歳までにトイレで排尿できるようになると考えられているので、それ以降も続く“おもらし”は受診をお勧めしています。

昼間尿失禁の診察では、排尿・排便習慣や生活習慣を詳しく聞き、記録をつけてもらいます。便秘により直腸にたまった便が昼間尿失禁を誘発させることがあるので、便秘があればまずは便秘の治療から行います。また、トイレでの排尿の間隔が開きすぎるなどの排尿習慣の異常がある場合は、2〜3時間ごとに時間を決めて排尿する定時排尿を指導します。

こうすることで、こどもが自らの尿意に気付くことを促します。このような行動療法でも改善しない場合は内服薬での治療を検討します。治療を行ってもすぐには改善せずに、ある程度こどもの成長を待たざるを得ないこともあります。臭いや衣服のぬれで困らないようにパッドなどを使うことも有効で、昼間尿失禁の不安を少しでもやわらげることがこどものストレス軽減に役立ちます。

 

こども医療ネットワーク会員

井手迫俊彦(済生会川内病院泌尿器科・小児泌尿器科)