こども救急箱

vol.295 児童発達支援

―特性に応じ行動変容促す―

南日本新聞掲載日付 2021/11/05

最近、「保育園の先生から療育をすすめられたのですが」と相談を受けることが多くなりました。「療育」は、児童福祉法に定められている児童発達支援とほぼ同義語として使われています。今回は、この児童発達支援について簡単にご紹介します。

児童発達支援は、児童福祉法に基づいて規定された、障害のある子どもやその可能性のある子どもが自立した生活を送れるようにするための支援です。もともとは身体障害のある子どもへの治療と教育を合わせたアプローチを表す用語として使われていましたが、今は障害のある子どもの発達を支援する働きかけの総称として使われることが多くなっています。

対象は、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害などを持つ子どもです。勘違いされやすいですが、医師の診断がなくても支援を受けることは可能です。むしろ、診断がつかないけど困りごとを抱えている、いわゆる“グレーゾーン”の子どもの支援を目的に現在の児童福祉法に改定されました。子どもは一人一人発達のスピードが違います。育児書に載っている発達の経過は、あくまで平均値で、遠回りしたり、順番を前後したりする子どももいます。児童発達支援では、その子の発達状況や障害特性に合わせて関わることで、できることを増やしたり、力を引き出したりすることができます。「褒められた」という経験だけで、行動が変わる子もたくさんいます。

近年、児童発達支援を行う事業所の数も増えてきています。ただし、事業所はあくまでも力を引き出す方法を見つける場所であることには注意が必要です。日常生活で実践するためには、保護者も声掛けの方法などを勉強する必要があります。療育をすすめられたら、まずは見学して、子どもが楽しそうか、自分が相談しやすそうか確認してみてください。

 

こども医療ネットワーク会員

松永愛香(鹿児島大学病院小児科)