こども救急箱

vol.306 思春期

―始まりに個人差、治療も―

南日本新聞掲載日付 2022/10/28

「胸が大きくなるのが早いのでは」と心配して受診する女子は少なくありません。胸(乳房)の膨らみは、女子で最初にみられる二次性徴(思春期の徴候)で、胸のしこりや痛みで気付くことがあります。不思議に思われるかもしれませんが、しこりや痛みは男子にもみられる症状です。

思春期とは、子どもが大人になっていく過程で、心身ともに変化する時期を指し、性ホルモンが増加することで性差がはっきりしてきます。通常の思春期の始まりは、女子が10歳ごろ、男子が11~12歳ごろで、2~3年早いと思春期早発症が疑われます。

早発症の目安として、女の子では「7歳6ヶ月までに乳房が膨らみ始める、8歳までに陰毛・腋毛が生える、10歳6ヶ月までに生理が始まる」、男の子では「9歳までに精巣が発育する、10歳までに陰毛が生える、11歳までに脇毛・声変わりがみられる」があります。

そのほか、身長の伸び、骨の成熟、性ホルモンの増加などを総合的に評価して診断します。

病院では成長曲線を作成し、血液検査や手の骨のエックス線撮影などを行います。思春期早発症は、女子では原因不明の「特発性」が多いですが、男子は病気が隠れていることが多いので注意を要します。特発性でも、「周囲との差に本人が戸惑いを感じる」「早期に身長の伸びが止まる」いう問題点があります。

治療は、原因がある場合は原疾患に対する治療を行います。原疾患の代表例には脳腫瘍があります。特発性については、思春期が来るのを遅らせる治療もあります。

最近では学校でも成長曲線を作成するようになったため、学校から身長の伸びすぎを指摘されて受診されることもあります。思春期の開始は個人差がありますが、心配な時は小児科へご相談ください。

 

こども医療ネットワーク会員

徳永美菜子(今村総合病院小児科)