ヒトメタニューモウイルス(hMPV)というウイルスがあります。聞き慣れない名前ですが、日本では10歳までにほぼ100%が感染するありふれた風邪のウイルスです。皆さんもきっとかかったことがあるはずですが、多くは軽症で自然に治ってしまうので、これまでの風邪のどれがヒトメタニューモウイルス感染症だったのか分からないまま大人になります。
鼻水やせき、のどの痛み、発熱、体のだるさなど一般的な風邪の症状に加え、幼児では息をする際にゼーゼー、ヒューヒューといったぜんそくのような症状を起こしやすかったり、血液の中の酸素の量が少なくなったりします。時には重症になり入院が必要になることがあります。
似たような症状を起こす有名なウイルスにRSウイルスがあります。RSウイルスが1歳未満で流行することが多いのに比べ、ヒトメタニューモウイルスは1~3歳で流行することが多く年齢が高めです。鼻の中を綿棒でこすって判定する検査がありますが、風邪症状などがある子ども全員に行うわけではありません。肺炎を起こしている場合や入院を考える重症な風邪の時に、原因を探すために検査します。
ヒトメタニューモウイルス感染症に特効薬はなく、自己免疫力で治す病気で治す病気です。多くは軽症で自宅療養になることがほとんどです。発熱やせきがきつくない時に食事や水分を取らせ、鼻水が多い場合はできるだけ取ってゆっくり寝かせてあげましょう。
高熱で寝つきが悪い場合は解熱剤を使うのもよいです。水分が取れずおしっこの量が少なかったり、呼吸が苦しそうで顔色が悪かったりする際は、病院を受診して追加の治療や入院が必要でないか確認してもらいましょう。
こども医療ネットワーク会員
今給黎 亮(いまきいれ総合病院小児科)