腎臓の病気は、基本的に初期は無症状です。腎臓の働きがある程度悪くなると、尿量が少なくなる、浮腫(むくみ)がみられる、高血圧になるといった症状がでてきます。症状が出て異常に気づいた時には腎臓の働きを回復させることが難しく、透析が必要になることもあります。
これらの症状が出る前に早期に発見する必要があります。1973年に学校保健法(現在の学校保健安全法)が改正され、子どもの健康診断に尿検査が追加されました。74年に学校検尿が始まり、現在は日本のほとんどの自治体で小学1年生から中学3年生を対象に年1回実施されています。
学校検尿は腎臓の病気だけでなく、生まれつきの尿路(腎臓で尿が作られてから、尿が出るまでの経路)の奇形や糖尿病の発見にも役立ちます。学校検尿で異常を発見できると、早期に治療を開始できます。例えば、IgA腎症という病気は、学校検尿で見つかる腎臓の病気のうち最も頻度が高いのですが、知らずに放置すると腎不全になります。学校検尿が始まってから腎不全で透析が必要となる子どもの割合は3分の1に減少しました。
学校検尿で異常を指摘された場合は、決められた医療機関を受診して精密検査を受けます。学校検尿で異常が見つかっても、病気ではないことも多々ありますので、いたずらに恐れず受診しましょう。せっかく学校検尿を受けたのに、病院を受診しないまま過ごしてしまう人も時々みられ、病気が進行してから診断されることもあります。
忙しい朝に、尿を採取して学校に持っていくのはとても面倒ですが、得られるメリットはとても大きいです。学校検尿を上手に活用して、子どもの健康を守りましょう。
こども医療ネットワーク会員
稲葉 泰洋(鹿児島大学病院小児科)