こども救急箱

vol.316 腸重積

―泣き方や血便に注意を―

南日本新聞掲載日付 2023/08/25

腸重積とは、何かの原因で腸管が腸管にはまり込むことで腸の血流が悪くなり、最終的には腸閉塞(腸が動かなくなる)を起こす病気です。典型的には生後6ヶ月から3歳までの乳幼児によく起こりますが、その他の年齢でも起こります。

腸重積の最も一般的な症状は、突然の腹痛と嘔吐です。痛みが強く、普通の泣き方とは違う激しい泣き方をすることがあります。重積状態が自然に治り、一時的に比較的元気になることがあります。しかし、症状が進むと痛みは持続的になり、やがて疲れてぐったりしてきます。

イチゴゼリー状の血便(血液と粘液の混じった便)がみられることもあるので、便の状態を確認することが大切です。腹痛・嘔吐・血便が3大主要徴候ですが、全てそろうことは珍しく、ウイルス性の胃腸炎と区別がつきにくい場合もあります。腹部の超音波(エコー)検査は腸重積の診断に役立ちます。

治療としては、腸に空気や水溶性の造影剤を用いた高圧かん腸をかけることで、はまり込んだ腸を押し戻します。これを非観血的整復と言いますが、腸のはまり方次第ではうまくいかないこともあります。うまく整復できなかった場合や、既に腸管穿孔(腸管が破れて穴があいた状態)を伴う場合は手術が必要となります。非常に年少の小児と年長児では、腸重積の原因となるポリープ、 メッケル憩室、リンパ腫などがみつかることがあります。

発症から時間がたつにつれ、非観血的整復の成功率が下がってしまいます。嘔吐を伴って激しく泣く時、血便がある時は早めに小児科を受診するようにしましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

下園 翼(鹿児島大学病院小児科)