こども救急箱

vol.317 食物アレルギー予防

―乳児期の皮膚炎注意―

南日本新聞掲載日付 2023/09/29

子どもに多い鶏卵や乳・小麦のアレルギーは、赤ちゃんの頃の皮膚をきれいに保ち、それらの食材の摂取を不必要に遅らせないことで予防できる可能性が高いことが分かってきています。逆に、生後間もない時期にアトピー性皮膚炎などの皮膚炎があると、食物アレルギーになりやすいことも明らかになっています。特に生後6ヶ月までが重要で、その時期に赤みや浸出液を伴う皮膚炎を認める場合は、早めに治療をすることが必要です。

治療には、多くの場合ステロイド外用剤が使われます。ステロイド外用剤については、根拠のない否定的な情報がインターネットなどで氾濫していますが、適切な部位に適切なランク(強さ)のものを使用すれば副作用はほとんどみられません。アトピー性皮膚炎の外用薬では最近、ステロイド外用剤以外で有効な外用剤も開発されましたが、生後6ヶ月未満には現時点では適応するものがありません。生後間もない時期に皮膚炎がみられた場合には、ステロイド外用剤を主とした適切な治療を行い、離乳食開始時期に鶏卵や乳製品の摂取をあえて遅らせないことが重要です。

 とはいえ、以上のことを行っても食物アレルギーを発症するお子さんは一定数存在します。一部の重度食物アレルギーを除いて、低年齢からアレルギー食材を少しずつ摂取することで食物アレルギーは克服することができる可能性があります。

鶏卵や乳・小麦など、除去することが生活の質に大きく関わる食材は、積極的に治したいものです。個々の範囲で食べられる量を摂取することが、食物アレルギー克服への近道です。食べられる量を知るには、専門の医療機関で食物経口負荷試験を受けることをお勧めします。

 

こども医療ネットワーク会員

立元 千帆(あおぞら小児科)