こども救急箱

vol.319 炎症性腸疾患

―長引く胃腸炎に注意―

南日本新聞掲載日付 2023/11/24

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)と総称される病気が子どもにもあり、症状は腹痛、下痢、血便、発熱などです。IBDは、腸管に慢性的な炎症を起こす原因不明の病気で、一般に「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の2疾患からなります。根治治療はなく、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性疾患です。日本人のIBD患者は成人・小児ともに増加傾向で、現在潰瘍性大腸炎は約22万人、クローン病は約7万人と推定されています。小児は成人と比較し、治療に難渋することが少なくありません。また、6歳未満発症のIBDは「超早期発症型炎症性腸疾患」と言われ、原発性免疫不全症が背景にあることもあります。

潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こる病気です。対してクローン病は、消化管(口~肛門まで)のどこの部位にも炎症が起こり得ます。クローン病では腹部症状のないこともあり、体重増加不良や原因不明の発熱の精査で発見されることもあります。診断のために内視鏡検査をします。治療は、クローン病では栄養療法が第一選択です。エレンタールという成分栄養剤を内服します。潰瘍性大腸炎は、基本的に栄養療法は必要ありません。薬物治療は、どちらも5-ASA(アミノサリチル酸)製剤や免疫抑制剤、ステロイド全身投与、生物学的製剤などがあります。

現在の医療では根治は難しいですが、ここ数年で新しい薬剤がどんどん出てきており、昔と比較し、患者さんの生活の質は向上してきています。また、便検査では便中カルプロテクチンという検査が保険適応となり、IBDの診断補助や活動性評価に役立っています。胃腸炎だと思っても症状が長引く時は、まずは近くの小児科を受診してください。

 

こども医療ネットワーク会員

中村 陽(鹿児島大学病院小児科)