こども救急箱

vol.321 子宮頸がん

―子どものうちに予防を―

南日本新聞掲載日付 2024/01/26

日本人の2人に1人が生涯のうちにがんになりますが、実は子どものうちから予防できるがんがあります。それが子宮頸がんです。

2019年には日本で1万人を超える人が子宮頸がんを発症しました。20年の子宮頸がんによる死亡数は2887人でした。残念なことに00年以降、発症数も死亡数も増加しています。治療によって死を免れても多くの場合、子宮を取る手術が必要であり、妊娠・出産の機会を失ってしまいます。鹿児島県では毎年100人前後が子宮頸がんで亡くなっており、21年のデータによると人口あたりの死亡数は全国ワースト2位です。

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスに感染した後、発症します。ヒトパピローマウイルスは、性交渉によって感染するので、性交渉を行う年齢になるまでに、予防接種(HPVワクチン)によって予防することが大切です。

小学校6年から高校1年相当の女子は、予防接種法に基づく定期接種として公費によりHPVワクチンを接種することができます。公費助成の対象時期を逃すと、ワクチンの種類や接種を受ける病院によって幅がありますが、4万~10万円の実費が必要になります。接種勧奨が行われなかった世代(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)には、キャッチアップの接種が無料で受けられる制度があります。

HPVワクチンによって子宮頸がんの患者および死亡者を40~70%程度減らすことができると考えられます。あなた、あなたの子どもが子宮頸がんを発症してから「子どものうちに予防できるがん」があるとは知らなかったということにならないように願います。かかりつけの小児科、内科、産婦人科などで相談し、ぜひ接種しましょう。

 

こども医療ネットワーク理事長

岡本康裕(鹿児島大学病院小児科)