先天的に難聴をもつ子どもは、千人に1~2人といわれ、他の先天性の病気に比べると高い頻度となっています。難聴に気づかずに放置してしまうと、言葉の発達や社会とのコミュニケーションに影響を及ぼすため、早期に難聴を発見し療育へとつなぐことがとても大切です。このため、鹿児島県でも2021年に「新生児聴覚検査に係る手引き書」を作成し、医療・療育・行政・教育の連携をとっています。
現在は、「1―3―6ルール」という方法を用いています。まず生後1[岡本 康裕1] か月までに産科などで「新生児聴覚スクリーニング」を行います。自動聴性脳幹反応検査によって新生児の左右の聞こえを評価します。22年度の県内スクリーニング受検率は98.5%でした。
片方でも「再検査が必要である」という結果が2回出ると、精密検査実施医療機関(鹿児島市立病院または鹿児島大学病院の耳鼻咽喉科)に生後3か月までに紹介されます。
精密検査の結果、最終的には約半数の方は「難聴がない」と判断されますが、難聴の存在が確定した際には生後6か月までに補聴器を使用する、というものです。しかし、生後1年以上経過しなければ難聴の有無が判明しないこともあります。
難聴の原因はさまざまで、遺伝子の変異によるものが最も多く、[YM2] 先天性サイトメガロウイルス感染症によるものもあります。後者は[YM3] 早期の抗ウイルス薬投与が有効であるとされ、小児科と連携して治療します。
生まれたときに異常がなくても、徐々に難聴が生じることもあります。お子さんの左右それぞれの耳をふさいでみたときや小さな音への反応がおかしいかな、と感じたら耳鼻咽喉科の受診を考えてみてください。
こども医療ネットワーク会員
山下 勝(鹿児島大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)