こども救急箱

vol.324 精索捻転症

―6時間以内の手術必要―

南日本新聞掲載日付 2024/04/26

男子の急な陰嚢痛を引き起こす病気を総じて急性陰嚢症と呼びますが、この中でも精索捻転症は緊急で手術が必要なため最も注意すべきです。

精索は精子の通り道である精管や血管が束になっている部分。陰嚢の中で精巣が回転することでねじれ、精巣の血流が途絶えます。やがて精巣は血流障害のため壊死してしまいます。そのため、発症したら一刻も早く手術で精巣の回転を戻し、血管のねじれを解除する必要があります。

精索捻転症はあらゆる年齢で起こり得ますが、10歳以降に多く、特に12歳から16歳をピークに発症し、左精巣に多いとされています。症状は陰嚢の痛みや腫れ以外に、腹痛や吐き気などおなかの症状を伴うことも少なくありません。体を動かしている時以外に、安静時や就寝中も発症します。

治療は、手術で精巣の回転を戻して血流再開を確認できれば正しい位置で陰嚢内に縫合固定しますが、すでに精巣が壊死していれば摘出することもあります。精巣摘出の可能性は、発症から6時間以内は5%ほどなのに対し、7〜12時間だと20%、13~18時間だと40%、19~24時間だと60%、24時間以上だと80%と報告されています。精巣を温存するために、発症から6時間以内の手術が推奨されます。

しかし、残念ながら6時間以内に手術が行えることは少ないのが現状です。その原因の一つに、受診の遅れがあります。

精索捻転症は思春期の男子には誰にでも起きる可能性があります。最初に腹痛を感じることもありますので、急な腹痛を訴える際には精索捻転症の可能性も疑い、ぜひ陰嚢の症状も確認してみてください。

今回の記事を通じて保護者の方々に、この疾患についての認識が広まることを願っています。

 

こども医療ネットワーク会員

井手迫俊彦(済生会川内病院泌尿器科・小児泌尿器科)