「手足口病」が増えてきました。新型コロナウイルス禍前の国内では、毎年6月半ばから流行が始まっていましたが、今年は約1ヶ月半早い5月初旬から流行期に入りました。
原因は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる感染です。いずれのウイルスもA型、B型などのいくつかの種類に細分化されます。手足口病にかかった経験がある人でも、別のウイルス型に感染して再発症することがありますので、かかったことのある人もない人も同じように対策しましょう。
ウイルスは唾液や便を介した接触や飛沫で感染します。ただ体液や飛沫だけでなく、床や壁などの表面にもウイルスが感染力を保った状態で付着していることがあるため、環境にも注意が必要です。
患者さんの9割は5歳以下の子どもですが、大人もかかります。症状がない場合も多く、鼻かぜや胃腸炎で発症することもあります。無症状の大人が家庭にウイルスを持ち込む可能性もありますので、流行期には学校や保育施設だけでなく、家庭内感染にも気を付けてほしいと思います。
残念ながら予防接種はないため手洗い、うがいといった一般的な感染症対策が重要になります。アルコール消毒が効かないウイルスですので、せっけんによる流水手洗いをしっかり行ってください。
症状は口内、手のひら、足の甲や裏に2、3ミリの水疱、赤い発疹を認めます。発熱は全員にみられるわけではなく、3分の1程度といわれています。
新型コロナやRSウイルスのように、病院の検査でウイルスの特定ができないため、皮膚や粘膜の症状をみて診断します。一般的な風邪と同じく自然に治りますので、発熱やせきなどの症状に対して解熱薬や、せきやたんを鎮める薬を使いながら、体調の改善を図ります。
こども医療ネットワーク会員
高橋宜宏(鹿児島大学医歯学総合研究科感染症専門医養成講座)