2015年、日本は世界保健機関(WHO)に「麻疹(はしか)排除状態」と認定されました。これは、日本固有の麻疹ウイルスによる感染がなくなったことを意味します。当時は日本の公衆衛生対策の大きな成果とされました。
しかし、排除状態となった今でも、日本から麻疹感染がなくなったわけではありません。特に新型コロナウイルスの流行が落ち着いた今、海外からの渡航者を介した「輸入感染」として再び注目されています。
麻疹の感染力は新型コロナウイルスの5~10倍とも言われ、免疫を持たない集団では、短期間で爆発的に流行する恐れがあります。
麻疹は感染から10~14日の潜伏期間を経て、発熱、鼻水、喉の痛み、せきなどが現れます。初期症状は風邪に似ていますが、口腔内に「コプリック斑」と呼ばれる白い斑点が出現することが特徴で、その後全身へ発疹が広がります。
多くの場合、数週間で回復しますが、肺炎や脳炎、中耳炎などの重い合併症を引き起こすこともあります。特に乳幼児や高齢者は注意が必要です。
麻疹の予防には、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)が有効です。定期接種は1歳の第1期と就学前の第2期の2回となります。2回接種することでほぼ100%の免疫が得られるとされています。
ただ最近は、コロナ禍に接種機会を逃した子どもが増えたため、接種率の低下が問題となっています。鹿児島でも接種率は低く、22年度は第1期で92%(全国41位)、第2期で89%(全国45位)と国の目標である95%を大きく下回りました。
麻疹はワクチン接種で予防できる病気です。コロナ収束後の今だからこそ、接種状況を確認してみましょう。未接種や1回の接種で終わっている場合には、早めの接種を考えてもらえたらと思います。
こども医療ネットワーク会員
砂川雄海(国立病院機構鹿児島医療センター小児科)