子どもの突然死の70〜80%は心臓病が原因といわれています。心臓の形態に異常がある先天性心疾患や肥大型心筋症などのほか、形自体には異常のない不整脈などがあります。今回は、不整脈の一つである「QT延長」について詳しく説明します。
心臓は自身から発せられる電気伝達で動いています。「QT」とは、その動きを捉える心電図の波形の一部分のことです。心臓が興奮して収縮するQ波から、戻るT波までの時間(QT時間)が長いのが「QT延長」です。基準よりは長いものの病的とは言えない人と、失神やけいれん、突然死の可能性がある「QT延長症候群」の人に分けられます。
QT延長症候群は、心筋の細胞をイオンが出入りする経路(心筋イオンチャネル)の異常でQT時間が長くなる疾患です。多形性心室頻拍という危険な不整脈を引き起こすと、失神や突然死に至ります。生まれつきの先天性と、薬の副作用や体内の電解質異常による後天性があり、先天性は遺伝学的検査で診断することもあります。
診断にはQT延長の程度が重要とされます。QT延長がみられても、症候群とは診断されない場合が多くあります。心電図上のQT延長だけ持つ人は、約1200人に1人ですが、実際に症状を起こす人は5千人〜1万人に1人と考えられています。現在は、学校検診でQT延長などの心電図異常を早期に診断して、症状の出現を可能な限り防止しようとしています。
QT延長の疑いがあれば、専門の医療機関で、運動負荷心電図や24時間心電図、心臓超音波、血液検査を行い、治療方針を決定します。QT延長やQT延長症候群であっても適切に管理をすれば、症状を起こさず健康に日常生活を送れることがほとんどです。定期的な受診と、内服薬が始まったら飲み忘れに注意しましょう。
こども医療ネットワーク会員
二宮由美子(国立病院機構鹿児島医療センター小児科)