ロタウイルス腸炎は、「ロタウイルス」によって引き起こされる急性の腸炎です。初冬~早春にかけて流行し、ほとんどの人は5歳までに一度は感染します。国内では年間約80万人がかかっています。
感染力が強く、ウイルス粒子10~100個で感染します。集団感染は、保育園や幼稚園で起こることが多いですが、小中学校での発生も報告されています。
感染者の便を介した接触感染(経口感染)が主なので、排せつ物や吐しゃ物を処理する際は手袋などによる予防が必要です。排せつ物が乾燥してウイルスが空間に浮遊し、体内に侵入することがあるため、マスクを着用して防ぎましょう。
ロタウイルスはアルコールが効きにくく、流水とせっけんによる手洗いが大切です。家具やタオル、おもちゃなど環境面の消毒は、次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
感染すると、1〜4日で腹痛、嘔吐、下痢の症状が出現します。感染者の約3分の1には、39度を超える発熱もみられます。
抗ウイルス薬などの特効薬はなく、治療は主に症状を和らげることに重点が置かれます。脱水症状や体力の低下を防ぐため、水分補給や安静、食事管理を行います。水分補給は経口補水液が勧められます。
口内乾燥、反応不良など複数の脱水症状がある場合は、入院して点滴を行うことがあります。食事は消化に良いものを選び、無理に食べさせないことが大事です。
通常は1~2週間で自然に治りますが、乳幼児、特に初めての感染は重症化しやすいとされます。その後の再感染時は軽症化していく傾向があります。
ロタウイルス腸炎の80%はワクチンで予防でき、国内では2011年から定期接種として導入されています。最初の感染前にワクチンを接種し、免疫をつけておくことが重要です。
こども医療ネットワーク会員
髙橋宜宏(鹿児島大学病院感染制御部)