こども救急箱

vol.335 クループ症候群

―いつもと違うせきに注意―

南日本新聞掲載日付 2025/03/28

お子さんが夜中に「いつもとは違う変なせき」をして、慌てて救急外来を受診した経験のある方がいらっしゃるかもしれません。この変なせきは「犬吠様咳嗽」と呼ばれ、犬が鳴くような「ケンケン」、オットセイが鳴くような「オウッオウッ」というせきで、「のどが痛そうなせき」と表現する保護者もいます。遠くからでも分かる特徴的なせきです。

のどの奥には声帯という声を出す場所があり、その周囲を喉頭といいます。喉頭に病原体が感染して腫れることで犬吠様咳嗽や声のかすれが出ます。また腫れることで気道が狭くなると息を吸う時にヒューっと音がしたり息が吸いにくくなったりします。この病態を「クループ症候群」と呼んでいます。

 好発年齢は6ヶ月〜3歳頃の乳幼児で、さまざまな風邪のウイルスが原因となります。病院では喉頭の腫れを和らげる吸入を行い、加えてステロイドの内服薬を処方する場合もあります。夜間や泣いた時などに症状が強くなることがありますが、大多数は数日以内に軽快します。呼吸が苦しくて顔色が悪い、胸がベコベコするような苦しそうな呼吸、反応が悪いなどの症状がある場合は病院を受診してください。

 同じような病態で、より重症の「急性喉頭蓋炎」という病気があります。喉の痛みでダラダラよだれを垂らし、呼吸の苦しさからあごを前に突き出して匂いを嗅ぐような姿勢をとります。このような場合は救急車を呼んでください。急性喉頭蓋炎の原因の多くはインフルエンザ菌b型(Hib)ですので、予防にはヒブワクチンがとても有効です。忘れずに接種しましょう。

クループ症候群は家庭での対応も重要です。お子さんが落ち着くように安心させ、室内の湿度を適度に保つことが症状の軽減につながります。加湿器を使ったり、浴室で蒸気を吸わせたりするのも効果的です。症状が悪化する前に適切な対処を心がけましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

古城圭馴美(鹿児島こども病院)