百日ぜきは、特徴的な咳が長期間持続して回復までに100日ほどを要することに由来する、百日ぜき菌による感染症です。
典型的な百日ぜきは3段階の症状があります。まずは鼻汁・咳嗽といったかぜ症状が出現し、1〜2週間続きます。この間、徐々に咳が強くなっていきます。
次に、特徴的な咳が出ます。顔を真っ赤にして激しく連続して咳き込み、数十秒〜数分続きます。せき込んだ後に息継ぎのようにヒューという音をたてて息を吸う様子がみられます。この咳は1〜3週間で悪化し、最長2か月程度続きます。咳は徐々に回復していきますが、完全に回復するには最長6週間ほどかかります。ほとんどの場合、発熱はありません。
新生児や乳児は、無呼吸や肺炎、けいれん、脳症など合併症を起こして重症化することがあります。低月齢児ほど重症化しやすく、咳ではなくチアノーゼや無呼吸発作で発症することがあります。時には集中治療室での人工呼吸器管理を要する場合もあり、死亡例も少なくありません。新型コロナウイルス禍で激減した2020~2022年もほぼ毎年死亡例の報告がありました。
診断された場合、咳が消失するか抗菌薬治療を5日間投与するまでは登園を控えた方がいいです。治療は抗菌薬内服や、鼻汁・咳嗽への対症療法を行いますが、新生児や早期乳児は呼吸状態の観察のために入院での治療が望ましいです。
百日ぜきは予防接種で予防が可能です。百日ぜきワクチンは聞いたことがないかもしれませんが、五種混合ワクチンに百日ぜきが入っています。生後2か月から接種できるので、可能な限り早く接種することが望ましいです。最もハイリスクなワクチン接種前の乳児を守るために、上のお子さんがワクチンを接種することも大切です。
こども医療ネットワーク
下園 翼(鹿児島市立病院小児科)