人生100年時代と言われるようになりましたが、2010年以降に生まれた日本人の半数は107歳まで生きるという推計があります。もちろん、日頃から健康管理に注意し、成人期にはがん検診を受けて、適切に薬も利用するという条件付きだと思います。
現在の少子化傾向がこのまま続けば、子どもの比率は想像できないほど下がりますから、若者が働いて高齢者を支える従来の社会バランスが崩れることは明白です。それを防ぐために、国策としてさまざまな子育て支援対策が練られています。しかし、刻々と変化する時代のニーズに合った政策立案は難しいと言われます。「最近の若い者は・・」という世代間の考え方の違いのためでしょうか。
小児科は病気になった子どもの診断と治療をし、予防接種や健診などの保健業務を担当することで子育てを支援しています。最近では、上手に社会生活に馴染めない子どもの割合が増加し、療育の現場で発達障害児の支援に関わることもあります。
ところで、少子化対策には、子育て中のお母さんがもう一人子どもが欲しいと思える環境作りが重要です。子育ての経済支援だけでなく、保護者の精神的負担にも配慮する必要があると思います。
共働きやひとり親の家庭に限りませんが、平日に実施される学校行事だけでなく、休日行事やボランティア活動等に参加できないことも多いです。もちろん、できない事情は認められますが、精神的な負担は発生します。日本在住の外国出身の友人によると、幼稚園や小学校等の教育機関から求められる役割負担が大きく、両親が職を持って楽に子育てをする環境にないという感想を持っているそうです。
保育園の無償化以外に、子育て支援策は種々の角度から考慮されるべきかもしれません。
こども医療ネットワーク理事長
河野嘉文(鹿児島大学病院小児診療センター)