のど(咽頭、扁桃)に感染する病原体にはいろいろなウイルスや細菌があります。咽頭炎、扁桃炎の原因の多くはウイルスですが、注意すべき細菌として溶連菌(溶血性連鎖球菌)があります。溶連菌感染症の代表的な症状は、喉の痛み、発熱、鮮紅色の発疹です。舌が赤く腫れたり(苺舌)、発疹が治まった後に指の皮がむけることもあります。他にも伝染性膿痂疹(とびひ)のような皮膚感染症や中耳炎、肺炎などの様々な症状を呈することがあります。
溶連菌による上気道炎患者の5~10%に、皮膚感染症患者の約25%に、それぞれ平均10日後および平均20日後に発症する急性糸球体腎炎です。それは、血尿、蛋白尿などの尿所見が突然に出現して発症する腎炎で、溶連菌感染後急性糸球体腎炎と呼ばれます。2~12歳に多く、小児にとって注意すべき疾患です。
溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、自然治癒率が高く、一般的には予後良好な疾患とされています。しかし、浮腫、高血圧、高度の蛋白尿、肉眼的血尿などがあるときは入院が原則です。腎機能が低下し、浮腫がある時期には塩分や水分の摂取制限を行う必要があります。まれではありますが急激な血圧の上昇によりけいれんや嘔吐などを伴う高血圧性脳症を発症することもあります。
溶連菌感染症に罹患していたことに気づかずにいて、肉眼的血尿や浮腫、高血圧があり、血液検査(ASO高値や低補体血症など)、尿検査などで溶連菌感染後急性糸球体腎炎と診断されることもあります。
したがって、溶連菌感染症と診断された時には急性糸球体腎炎を予防することが重要です。その治療には抗菌薬を内服しますが、急性糸球体腎炎の予防には抗菌薬の種類にもよりますが、症状に関わらず7~10日間内服を継続することが勧められます。
こども医療ネットワーク会員
永迫博信(帖佐こどもクリニック院長)