こども救急箱

vol.257 尿の異常

―色や量から異変察知―

南日本新聞掲載日付 2018/07/03

 尿は腎臓で作られて、体に不要な物質や水分を排泄するとても大切な役割を担っています。今回は小児に見られる尿の異常を紹介します。

 まずは尿量の異常です。尿量が減る代表的な状態は脱水症です。嘔吐下痢症に罹患した時など、何時間も尿が出ないと脱水症が疑われます。逆に尿が必要以上に出る病気として、頻度は多くありませんが、尿崩症や糖尿病といった病気があります。尿量が極端に多く、異常に水分を欲しがる場合は要注意です。尿の回数が増える病気としては膀胱炎や心因性があります。膀胱炎では排尿時に痛がったり、血尿が出たりすることがあります。

 次に尿の色の異常です。一番多いのはやはり血尿です。普通の尿は麦わら色をしていますが、血尿があると赤色に変化します。原因としては膀胱炎・尿路結石・水腎症などがありますが、病気によっては褐色に近い色のこともあります。病気でなくても、水分摂取が不足して血尿にみえるような濃い尿が出ることがあるし、時には風邪薬に含まれる成分のせいで血尿に見える場合もあります。

 最後に尿路感染症について紹介します。尿の通り道で病原体によって炎症が起きる病気です。細菌による尿路感染症では尿が混濁してみえることがありますが、尿が混濁しているからといって尿路感染症というわけではありません。尿路感染症を起こす背景に何か腎臓の病気が隠れている場合がありますので、尿路感染症に気づく事はとても大切です。

 子どもの尿の異常から病気を見つけることが可能ですので、おかしいと感じたら近くの小児科医に相談しましょう。自律排尿が確立していない乳幼児でも、尿を採取するための特殊なバッグがありますので尿検査は可能です。

 

こども医療ネットワーク会員
稲葉泰洋(鹿児島大学病院小児診療センター)

vol.256 学校心臓検診

―異常見つけ適切に対処―

南日本新聞掲載日付 2018/06/05

 学校心臓検診は、学校保健法に基づき小中高校の1年時に実施しています。進学で環境が変わる節目に、隠れた心臓病を発見し、運動や部活動を安全に行うこと、学校での突然死を防ぐことなどが目的です。

一次検診は、学校で対象学年の全員が受けるもので、昨年の鹿児島県内受診者は1万5847人でした。

二次検診は、一次検診で異常の疑いがあると判断された子どもに、医療機関でエックス線写真や超音波検査などで精密検査をするものです。昨年の精密検査受診者は281人で、そのうち44人が継続して通院を必要と診断されました。

一次検診は問診票の記載と心電図で行います。私たち小児循環器医が小中学生を、循環器内科医が高校生をそれぞれ担当します。

対象者の波形は全て、2名以上の検診担当医師で確認します。問診票には、これまでに心臓の病気にかかったことがあるか、息切れ、動悸、胸痛などの症状があるか、家族に突然死した人や心臓病がある人がいるかなどを書くようになっています。

心電図波形が異常とされない場合でも、問診票の記載で病気が疑われる時は二次検診で異常が見つかる場合がありますので、問診票を正しく記載をすることが大切です。

このように少数ではありますが病気の可能性を指摘され、一部に運動で突然死の危険があると診断される子どももいます。診断されても、運動管理や治療を受けることで、安全に生活できますので、学校心臓検診の役割は大きいのです。

学校心臓検診で病気と診断されると、戸惑い、混乱すると思いますが、不安なことがあったら小児循環器医に相談してください。子どもが安全で快適な学校生活を送れるよう、一緒に考えましょう。

 

こども医療ネットワーク会員
川村順平(鹿児島大学病院小児診療センター)