人気漫画「ドラゴンボール」で、主人公・孫悟空がウイルス性心筋炎で命を落とすエピソードが出てくるのを知っていますか?ウイルス性心筋炎は、ウイルス感染を原因として起こる一般的な風邪がきっかけとなります。
風邪の場合、ウイルスが増殖する場所は鼻、喉、気管といった気道が中心で、症状は鼻汁やせきなどです。何らかの原因でウイルスが心臓の細胞へ侵入して増殖し炎症を起こすのが心筋炎で、心筋細胞がダメージを受けて最悪の場合は壊死してしまうことがあります。
ウイルスがどのように心臓の細胞へ侵入するのか正確には分かっていませんが、感染後5~7日で心筋細胞のダメージが確認され10~14日程度で修復過程に入っていくことが知られています。ダメージを受けた心臓は体全体へ血液を送ることが難しくなるため、さまざまな症状を呈します。
はじめは風邪と同じ症状でも、嘔吐、腹痛などの消化器症状やけいれんなど次々に変化することがあるため、慣れた小児科医でも心筋炎を初期に診断することはとても難しいです。
血液検査、心電図、心臓超音波検査などを駆使して診断しても急速に病状が悪化することがあり、速やかにECMO (エクモ) と呼ばれる体外循環装置を導入しなければならないケースがまれにあります。孫悟空のように命を落とすこともあり得ない話ではありません。
近年、若年者で新型コロナウイルス感染やワクチン接種の後に心筋炎を発症することがあると報告されています。ワクチン後の心筋炎は軽症がほとんどで、頻度が極めて低いことも分かっており、接種により感染・重症化予防を図るメリットの方が大きいとして、日本循環器学会では基本的にワクチンを推奨しています。日頃からかかりつけの医師とよく相談し、万全の体制で備えておくことが重要と考えます。
こども医療ネットワーク
櫨木 大佑(鹿児島市立病院小児科)