今、コロナウイルスワクチンの話題でもちきりですね。予防接種は、多くの人々がかかってひどく苦しんだ経験のある感染症に対して、特に飲み薬もない感染症からどうやって人々を守ろうか考えた結果生み出された方法です。ワクチンによって程度の差はありますが、副作用の頻度は極めて低く、その感染症にかかりにくくする効果や、かかっても重症化を防ぐ効果が科学的に認められているものが使われています。
予防接種は、自分にだけメリットがあるわけではありません。自分がかからないことで、周りの人を守るというメリットもあります。インフルエンザワクチンを集団接種していた時代は、インフルエンザでなくなるお年寄りの数が少なかったことを示す疫学調査があります。残念ながら、近年風疹の流行が時々ありますが、流行の翌年に、生まれつきとても重い病気をいくつも引き起こす先天性風疹症候群の赤ちゃんが増加するデータもあります。
自分がその感染症にかかりやすいかどうかは、血液中の抗体価という値を調べるとある程度正確に判断できます。例えば、風疹の抗体価は、1962(昭和37)年4月2日から1979(昭和54)年4月1日生まれの男性では低いことがわかっていて、この年齢の男性には風疹ワクチンの定期接種がなかったためです。
近年はこれらワクチン未接種の大人を中心として風疹が流行しています。そこで、妊娠を希望する女性やその同居者だけでなく、2022年2月までは前述した年齢層の男性に対しても、風疹の抗体検査とワクチン接種の助成を行う事業が各市町村で行われています。
この機会に、様々な感染症から自分を守ることはもちろん、今周りにいる人、これから生まれてくる人たちのためにも、新型コロナウイルス以外の必要な予防接種を受けることも検討してください。
こども医療ネットワーク会員
楠生 亮(鹿児島市立病院小児科)