こども救急箱

vol.349 成長曲線

―健康状態知る手がかり―

南日本新聞掲載日付 2026/05/26

「順調に成長しているかな」と思った時に役立つのが成長曲線です。母子健康手帳にも掲載されており、なじみのある方も多いのではないでしょうか。

成長曲線は、子どもの身長や体重の成長過程や同性・同年代の中でどの位置にあるかが分かるグラフです。乳幼児健診や学校健診でも活用されています。

平均からどれくらい離れているかを示す「標準偏差」(SD)や、全体を100として小さい方から何番目になるかを示すパーセンタイル値で表されます。同年代の標準的な発育範囲は、マイナス2~プラス2SD、または3~97パーセンタイルです。注目すべき点は、単純に「平均より上か下か」ではなく「その子なりの伸び方」を見ることです。

1回の測定値だけでなく、成長とともにどのような線を描いているかに注目します。低めの位置でも同じカーブに沿って順調に伸びていれば、多くの場合は心配はいりません。

一方、①標準発育の範囲を外れている②カーブに沿っていない③身長と体重のバランスが悪い場合は注意が必要です。体の大きさや発育のスピードは一人一人違い、両親の身長や体質も影響するため、「①~③に当てはまる=病気」というわけではありません。

しかし、発育へ影響する病気が隠れていることもあります。健診で成長曲線の異常を指摘された場合は、必ず医療機関を受診しましょう。保護者の方が気になる変化に気づいた場合も、小児科での相談をおすすめします。

病院では、ご家族の身長などを含めた問診や二次性徴の確認に加え、手のレントゲンで骨の成熟度を調べたり、血液検査で栄養状態や成長に関わるホルモンのバランスを確認したりします。

成長曲線は、子どもの健康状態を知るための大切な手がかりです。定期的に記録をつけていくことで、変化に早めに気づくことができます。その子らしいペースを大切にしながら、日々の成長を温かく見守っていきましょう。

 

こども医療ネットワーク会員

德永美菜子(鹿児島大学病院小児科)

vol.348 花粉症

―マスクや眼鏡で対策―

南日本新聞掲載日付 2026/04/28

春が近づくと、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状に悩まされる方が増えてきます。いわゆる「花粉症」です。以前は大人に多い病気という印象がありましたが、近年は小さな子どもも発症する例がみられるようになりました。外来でも、保育園児や小学生が花粉症と診断されることは珍しくなく、花粉症の低年齢化を感じます。

花粉症は、植物の花粉に対して体の免疫が過剰に反応することで起こるアレルギー疾患です。春に多いスギやヒノキ花粉のほか、夏にはイネ科の花粉であるオオアワガエリ、秋にはブタクサやヨモギ、冬から春にかけて飛ぶハンノキ花粉など、原因となる植物はいくつもあります。中でも日本で最も多いのがスギ花粉症です。

主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみですが、子どもの場合は鼻づまりによって口呼吸になったり、睡眠の質が低下したりすることもあります。その結果、日中の集中力が落ちるなど、生活の質に影響することもあります。

スギ花粉症は年々増えているといわれており、今では多くの人が経験する身近な病気となっています。治療の基本は、抗アレルギー薬の内服や点鼻薬、点眼薬などによって症状を抑えることです。

最近は眠気などの副作用が少ない薬も増えており、日常生活への影響を抑えながら治療できるようになっています。花粉が多い日はマスクや眼鏡を使用し、帰宅後に衣服についた花粉を落とすなど、日常生活での対策も大切です。

スギ花粉症に対しては、「舌下免疫療法」という体質改善を目指す治療法もあります。原因となるアレルゲンを少量ずつ体に慣らし、数年かけてアレルギー反応を起こしにくい体質に導くことが期待されます。花粉の飛散していない時期に開始する必要があり、一般的にはゴールデンウイーク明け以降に治療を始めます。現在、保険適用されています。

花粉症は身近な病気ですが、適切な治療によって症状を軽くできます。悩んでいる場合は、医療機関で相談してください。

 

こども医療ネットワーク会員

井上博貴(井上小児科医院)

vol.347 ナッツアレルギー

―湿疹放置せずケアを―

南日本新聞掲載日付 2026/03/24

お買い物の時に、商品の食物アレルギー表示を見たことはありますか。

アレルギー表示が義務づけられている食品は、これまで鶏卵、牛乳、小麦、そば、落花生(ピーナッツ)、エビ、カニの7種類でしたが、2024年にクルミが加わり25年度中にはカシューナッツも加わる予定です。理由はナッツ類による食物アレルギーの患者が増えているからです。

8年前の調査では食物アレルギーの原因は1位鶏卵、2位牛乳、3位小麦で、ナッツ類は4位でしたが、24年度の調査では鶏卵に次いでナッツ類が2位になりました。

ナッツアレルギーが増えている原因の一つに、健康志向の高まりに伴い、ナッツ類の消費量が増えていることが挙げられます。ナッツ類はタンパク質や食物繊維が豊富で栄養価が高いからです。

家の床やベッドのほこりを調べると、その家で食べられている食べ物の成分が含まれていることが分かっています。ナッツ類を食べる家庭では、その成分が家内で広がり、ナッツ類を食べない小さい子どもも皮膚を通じてナッツ類に触れて、アレルギーとなりえます。特に湿疹などで肌荒れした皮膚は注意が必要です。

アレルギーを防ぐためには子どもの湿疹を放置せずにスキンケアをしてください。改善しない場合は病院やクリニックを受診して軟こうなどで積極的に治療をすることが推奨されます。

口や消化管でナッツに接するとアレルギーを発症しにくいので、子どもの時に一律に制限しない方がよいです。ただ幼児にとって、小さく固い食べ物は窒息や誤嚥のリスクがあります。

すでに湿疹があったり何かの食物アレルギーがあったりする場合は、ナッツアレルギーがないかを確認するために、血液検査や皮膚テストをした方がよい場合があります。検査の必要性やタイミングについては、かかりつけ医に相談することが望ましいです。

 

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今給黎 亮(いまきいれ総合病院小児科)

vol.346 てんかん

―発作出たら安全確保を―

南日本新聞掲載日付 2026/02/24

「てんかん」にどんなイメージがありますか。

てんかんは、決して珍しい病気ではなく、適切な治療を受けながら社会生活を送っている方がたくさんいます。てんかんを正しく理解し、偏見をなくしていくことが大切です。

てんかんは、脳の神経の働きが一時的に乱れることで、体のけいれんや意識の変化などの「発作」が繰り返し起こる脳の慢性的な病気です。誰でも発症する可能性があり、精神的な問題や性格とは関係ありません。日本では、およそ100人に1人がてんかんを持っているといわれています。

発作は数秒から1~2分で自然に治まることが多いものの、長く続いたり、繰り返したりする場合は、速やかな医療対応が必要です。

発作の症状は、全身がけいれんするだけでなく、手足が一瞬ピクッと動く、短い間だけぼんやりするなどもあります。原因は、脳卒中、脳炎、遺伝などさまざまですが、特定できない場合もあります。子どものてんかんでは、成長とともに発作がなくなるケースもあります。

治療の中心は抗てんかん薬の服用です。薬を正しく飲み続けることで、発作をコントロールでき、普通の生活が可能です。一定の条件下で車の運転を続けることができる人もいます。

もし周囲の人が発作を起こした場合は、安全の確保が第一です。けいれんしている人を押さえたり、口の中に物を入れたりすると、けがや窒息の危険があります。

周囲の危ない物をどけ、横向きに寝かせて、発作が終わるまで見守りましょう。発作が5分以上続いたり、何度も繰り返したりする場合は、救急車を呼んでください。

毎年3月26日は「パープルデー」と呼ばれ、世界中でてんかんの理解を深める活動が行われています。紫色は、てんかんとともに生きる人々を応援する色です。この日をきっかけに、てんかんについて知り、支え合う社会を考えてみませんか。

 

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松永愛香(鹿児島県立薩南病院小児科)

vol.345 目やに

―こまめな手洗いで予防―

南日本新聞掲載日付 2026/01/27

目やに(眼脂)は、涙に含まれる「ムチン」という粘り気のある成分に目の表面の物質が絡まってできたものです。

通常は少量で、まばたきや涙と一緒に自然に流れます。目の表面からはがれる細胞や分泌物の増加、目の炎症、涙の通り道が狭くなることなどにより、目の周りにあふれ出たものが目やにとなります。小児ではよくみられる症状で、病院に行くべきかどうか迷いやすいです。

目やにの原因には、細菌やウイルス性による結膜炎、アレルギー性結膜炎、風邪などの呼吸器感染症があります。また、新生児や乳児は鼻涙管(涙の通り道)が生まれつき狭くて詰まりやすいことや、逆まつ毛などが原因となることがあります。

病院を受診する目安は、目やにの量が増える、白目が赤く充血する、まぶたが腫れる、目やにで目が開かない、痛み・かゆみが強い、2~3日以上良くならないなどの症状があるときです。黒目が白く濁って見える場合には、緊急性が高い病気の可能性があるため早めの受診を勧めます。

細菌性結膜炎では黄白色のネバネバでドロっとした目やにが多いです。この場合は抗菌薬の点眼(目薬)で治療します。

一方、ウイルス性結膜炎やアレルギー性結膜炎、鼻涙管の詰まりでは水っぽくさらっとした性状の目やにが多いです。炎症やアレルギーを抑える目薬を使いながら様子を見ます。

鼻涙管の詰まりは、成長とともに自然に良くなることがほとんどです。しかし、生後6ヶ月を過ぎても繰り返す場合は、小児眼科で治療が必要となることもあります。

家庭では、清潔なガーゼや綿棒をぬるま湯で湿らせ、優しく拭き取ってください。また細菌の2次感染を予防するため、タオルの共有をせず、こまめに手洗いを心がけることが大切です。 

 

こども医療ネットワーク会員

久米浩二(鹿児島こども病院)