こども救急箱

vol.289 免疫不全症

―早期の兆候発見が重要―

南日本新聞掲載日付 2021/05/04

お子さんが保育園に通い始めたときに、ひっきりなしにかぜを引くことは、よく経験されることだと思います。そして、「うちの子は他の子に比べ、熱がよくでるのではないか、身体が弱いのではないか」と心配になる保護者の方もいます。

私たちの身体は、病原体や毒素が体内に侵入して感染症を起こしたときに、それらを排除するための機能を備えています。そして、感染症が治った後は、同じ病原体の感染症にかからなくなったり、かかっても軽症で済んだりする仕組みがあります。それらを「免疫」と呼びます。免疫は生まれつき完成されているわけではなく、成長や感染を繰り返すことで成熟していきます。そのため、乳幼児期が最もかぜを引きやすく、症状も長引くことがあります。

乳幼児期の「かぜをよく引く」は、ほとんどが問題ありませんが、それに加え「重症化する」「発育不良を伴う」「毒性の弱い病原体による感染症にかかる」などがみられる場合は、免疫が十分に機能できていない「免疫不全症」にかかっている可能性があります。生まれつきの原因で起こる免疫不全症は「原発性免疫不全症」と呼ばれ、非常にまれな疾患ですが、免疫に関わる細胞などで分類され、300以上もの種類があるため、診断や治療に慎重な判断が求められます。

最も重症の原発性免疫不全症として重症複合免疫不全症(SCID)があります。早期に診断できないと感染症のため乳児期に死亡してしまいます。米国で2008年、SCIDの新生児スクリーニング検査が開始され、早期発見の有効性が示されました。日本でも少しずつスクリーニング体制が広がりつつあります。

厚生労働省の調査研究班がまとめた、「原発性免疫不全を疑う10の徴候」(http://pidj.rcai.riken.jp//10warning_signs.html)というホームぺージもありますので、参考にしてみてください。

 

こども医療ネットワーク会員

西川拓朗(鹿児島大学病院小児科)